名古屋地方裁判所 昭和48年(わ)1052号 判決 1975年3月25日
本籍および住居
名古屋市中川区小本本町三丁目一七九番地
会社役員
田中正治
昭和一一年一一月二三日生
右の者に対する公務執行妨害、傷害被告事件について、当裁判所は検察官野武興一出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役八月に処する。
この裁判確定の日から一年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、名古屋市中川区小本本町三丁目一七九番地に所在し、衣類製造、卸業を営む有限会社田中衣料の代表取締役であるが、昭和四七年一一月一日午後一時三〇分ころ、同会社の取引先である一宮市せんい四丁目二番二二号株式会社伊藤和商店応接室において、折から前記田中衣料の昭和四五年、同四六年事業年度法人税に関する調査のため、右伊藤和商店の帳簿類を検査中の名古屋国税局中川税務署法人税源泉所得税第二部門国税調査官弓矢久郎(当時四二年)を認めるや、たまたま机上にあつたそろばん(昭和四八年押第四二二号の一)を取り上げ、同調査官に対し、その左手小指を一回殴打したほか、机上の帳簿類、机等を数回殴打する等の暴行を加え、もつて、同調査官の右職務の執行を妨害し、その際、前記暴行により、同調査官に対し、全治約一週間を要する左小指挫傷の傷害を負わせたものである。
(証拠の標目)
判示事実は
一、 第一回公判調書中の被告人の供述部分
一、 被告人の当公判廷における各供述
一、 第二、三回公判調書中の証人弓矢久郎の各供述部分
一、 証人弓矢久郎の当公判廷における供述
一、 第四回公判調書中の証人寺沢正剛の供述部分
一、 証人毛受英次、同水谷忠男の当公判廷における各供述
一、 医師毛受英次、同水谷忠男作成の各診断書
一、 証人岡田幹雄の当公判廷における供述
一、 市村弘昭の司法警察員に対する供述調書
一、 司法警察員作成の実況見分調書抄本
一、 押収してあるそろばん一丁(昭和四八年押第四二二号の一)、法人源泉調査せん一枚(同押号の二)、同一枚(同押号の三)、同一枚(同押号の四)
一、 被告人の司法警察員および検察官に対する各供述調書によつて認める。
(法令の適用)
一、 判示所為中
公務執行妨害の点刑法九五条一項傷害の点同法二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号
一、 (観念的競合)
刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い傷害罪につき定めた懲役刑で処断
一、 (訴訟費用)
刑事訴訟法一八一条一項本文
(裁判官 高橋一之)